深刻な人手不足が続く中、多くの企業において「優秀なパート・アルバイトに長く働いてほしい」「採用コストを抑え、定着率を向上させたい」という課題は、経営の最優先事項となっています。
働き手の意識も変化しており、時給の高さだけでなく、「自分の貢献を正当に評価してくれるか」「安心して長く働ける環境か」を重視する求職者が増えています。
そこで今回は、非正規雇用労働者の処遇改善を前向きに進めたい経営者様に向けて、手軽に取り入れやすく、国からのバックアップも受けられる「キャリアアップ助成金(待遇改善に関するコース)」の具体的なメニューと、それを活かした職場環境づくりのポイントを解説します。
キャリアアップ助成金には複数のメニューがありますが、その中でも比較的シンプルで、企業の現状に合わせて導入しやすい代表的な3つのコースをご紹介します。
賃金規定等改定コース: パート・アルバイト全員、または特定の職種グループ(例:リーダー職のみなど)の基本給の賃金テーブルを、一定割合以上(例:3%以上など)増額改定した場合。
賃金規定等共通化コース: 正社員とパート・アルバイトとの間で、職務内容が同じ場合に「共通の賃金規定(同一の基本給テーブルや一律の評価基準など)」を新たに設けて適用した場合。
短時間労働者労働時間延長支援コース: 週の所定労働時間を一定時間以上延長し、新たに自社の社会保険(健康保険・厚生年金)に加入させた場合。
※支給額や要件は、取り組むメニューや企業の規模(中小企業か大企業か)によって細かく定められています。
これらの制度改定は単なる資金援助ではなく、労使双方がWIN-WINの関係を築くための強力なツールとなります。
「パートだから一律の時給で上がらない」のではなく、頑張りや役割に応じた賃金の仕組みが明確になることで、日々の業務へのモチベーションが目に見えて高まります。また、労働時間が延びて社会保険に加入できることは、将来の保障や生活の安定にも直結します。
「他社が上げたから、なんとなく時給を上げる」という対応では、財務を圧迫するだけで、従業員へのメッセージになりづらいものです。しかし、国をあげて推奨されている「評価基準の共通化」や「労働時間の延長(社会保険加入)」を会社の方針として明確に打ち出すことで、求人市場における他社との圧倒的な差別化(採用力の強化)に繋がります。結果として、定着率が向上し、長期的な採用・教育コストの削減という大きなリターンが期待できます。
助成金を活用して処遇改善を行う場合、以下の手順に沿って、事前の計画的な準備が必要となります。
「キャリアアップ計画書」の事前提出 取り組みをスタートする前に、あらかじめ計画書を作成し、管轄の労働局に提出して認定を受ける必要があります。
就業規則(賃金規程)の改定・整備 新たに賃金テーブルを改定したり、共通の仕組みを導入したりする場合、その対象者、支給基準、計算方法などを就業規則や賃金規程に明確に明文化(ルール化)し、労基署へ届け出る必要があります。口約束や一時的な変更では対象になりません。
計画に沿った運用の実施と、適切な労務管理 変更した規程に基づいて実際に支給や労働時間の変更を行い、タイムカードや賃金台帳などの帳簿類を不備なく整備しておくことが、最終的な申請手続きにおいて非常に重要です。
待遇の改善は、経営陣の「従業員を大切にしたい」「頑張りに応えたい」という前向きな想いを、具体的な形にして伝える事ができる取り組みです。
一方で助成金の申請手続きは要件が非常に細かく、就業規則の文言ひとつ、あるいは事前の提出タイミングひとつで受給の可否が変わるなど、専門的な実務知識が求められる側面もあります。また、「自社の就労実態に対して、どのコースが最もスムーズに導入できるか」という事前の見極めも欠かせません。
法令に則った適切な制度設計を行い、会社にとっても働く皆様にとっても価値のある強固な組織体制を整えていきませんか?
当事務所では、貴社の経営状況や人員構成に合わせた最適な待遇改善プランのご提案から、複雑な就業規則・賃金規程の改定、キャリアアップ計画書の作成・申請代行まで、トータルでサポートしております。「まずは自社で取り入れやすいコースがどれか知りたい」という段階から、どうぞお気軽にご相談ください。
助成金の詳しい内容や、申請までの流れ、パンフレットなどは厚生労働省の以下のページをご確認ください。