2026年10月の「同一労働・同一賃金」関連法改正に向け、実務上の具体的な準備が進む中、中部エリアにおいて、特に注視すべき実務上の「盲点」があります。
それが、派遣労働者のマイカー通勤における「派遣先企業での駐車場の貸与・手配」の問題です。
この地域では、公共交通機関に加えてマイカー通勤が一般的ですが、現状「自社の通常労働者(正社員等)には敷地内の駐車場を無料(または格安)で貸与しているが、派遣労働者には貸与せず、派遣会社や労働者自身が近隣の月極駐車場を手配している」というケースが散見されます。
今回の法改正やこれまでのガイドラインの趣旨に照らし、この現状にどのようなリスクがあり、派遣元・派遣先双方がどう認識を改めるべきか、公平な視点から解説します。
同一労働・同一賃金(パート・有期雇用労働法、労働者派遣法)の原則において、不合理な待遇差の禁止は「基本給」や「賞与」だけでなく、「福利厚生」や「教育訓練」、そして「就業環境・通勤の利便性供与」にまで及びます。
厚生労働省のガイドラインや近年の解釈において、通勤手当(金銭)の不合理な差が禁止されているのと同様に、「通勤手段(駐車場という現物支給や利便性の供与)」についても、合理的な理由のない格差は「不合理な待遇差」と判断されるリスクが高くなっています。
正社員には敷地内駐車場を貸与し、派遣労働者には貸与しない(または遠方の不便な場所を指定する、全額自己負担させる)という取り扱いは、法的なリスクになり得ます。
この問題は、派遣会社(派遣元)だけで解決することはできません。派遣先企業が法改正の趣旨を正しく理解し、双方で情報連携を行う必要があります。
【派遣先企業(受け入れ側)に求められる対応】
2026年10月の改正では、派遣先が派遣元に提供する「比較対象労働者の待遇情報」の正確性と説明義務がより厳格化されます。
現状の総点検: 自社の通常労働者(正社員や直接雇用のパートタイマー)に対して、駐車場をどのような基準(全従業員対象か、通勤距離ベースか等)で貸与しているかを整理してください。
不合理な差の解消: 「派遣社員だから一律に対象外」とするのではなく、正社員と同じ通勤条件(例:通勤距離2km以上など)を満たす派遣労働者に対しては、敷地内駐車場の利用を認める、あるいは近隣駐車場の費用負担について派遣元と誠実に協議する(派遣料金への反映など)姿勢が求められます。
【派遣会社(派遣元)に求められる対応】
派遣スタッフの雇用主として、スタッフが安心して働ける環境を確保し、かつ派遣先に対して法律に基づいた公平な交渉を行う役割があります。
情報の確認と交渉: 派遣先から提供される情報の中に、駐車場の貸与基準や通勤に関する利便性供与の有無が含まれているかを確認します。差がある場合は、その理由(客観的・合理的な理由か)を派遣先に確認し、必要に応じて「法令順守のための環境整備」として派遣先へ申し入れ・協議を行います。
スタッフへの誠実な説明: 万が一、派遣先での駐車場の空き容量(物理的な限界)などの合理的理由で貸与が受けられない場合は、それに代わる措置(近隣駐車場の費用を派遣会社側で一部手当として支給するなど)を講じ、その理由をスタッフに納得感を持って説明できる体制を整えます。
中部エリアにおいて、駐車場の有無やその費用負担は、働く皆さまにとって「実質的な処遇(経済的負担)」や「日々の就業環境の安心感」に直結する大切な要素です。 「周辺設備」の一つとして捉えるのではなく、派遣元・派遣先双方が対等なパートナーとしてこの課題に向き合うことは、単なる法令順守にとどまらず、優秀な人材に長く活躍してもらえる魅力的な職場づくりへと繋がります。
施行日である2026年10月1日に向け、まずは現在のマイカー通勤者の運用実態の確認から着手してみてはいかがでしょうか。
詳しい改正内容や、実務で活用できる公式リーフレット、Q&Aなどの最新情報は厚生労働省の以下の特設ページをご確認ください。
(※ページ内には、派遣元用・派遣先用それぞれのリーフレットや、労使協定方式に関する最新の通達・Q&Aが随時掲載されています。実務着手の前に必ず最新資料をご一読ください)
当事務所では、特定の立場に偏ることなく、労働法令および地域の実務実態(車通勤の慣行など)に即した客観的な視点から、派遣元・派遣先双方のトラブルを未然に防ぐコンサルティングを行っております。契約書や情報提供書のチェックなど、お気軽にご相談ください。